アヴァンギャルド・アウトテイクス

Shiny Booksが発行する雑誌『アヴァンギャルドでいこう』の公式ブログです。ウェブ限定記事を中心に様々なトピックを提供していくのでお楽しみに!

#17/神聖かまってちゃん…<一つの時代の終わり>

神聖かまってちゃんのロックンロールはもはや「鳴り止み」始めている。僕個人はこれまで、神聖かまってちゃんから受けた影響があまりにも大きいために、神聖かまってちゃんに対しては褒める事しかしてこなかった。何故なら、その他にあまりにも愚劣なものが…

#16/カフカの独楽、あるいは原型のアレゴリー(2) ~『戦場でワルツを』~

アリ・フォルマン監督『戦場でワルツを』(2008年)は、20年前のレバノンでの戦争の記憶、しかもある一日だけの記憶がすっぽりと抜け落ちている映画監督のアリが、その「失われた時を求めて」旅をする物語です。 いわゆるドキュメンタリー・アニメーションと…

#15/カフカの独楽、あるいは原型のアレゴリー(1)~『ドストエフスキーと愛に生きる』~

ヴァディム・イェンドレイコ監督の映画『ドストエフスキーと愛に生きる』が東京で公開されたのは、2014年2月22日。ところが日本語字幕版DVDやBlu-rayなどは、2015年6月現在、販売されていません。しかし、スヴェトラーナ・ガイヤーという偉大な翻訳者の生活…

#14/「相対性理論」論

今、現在から振り返れば、「神聖かまってちゃん」にしろ「相対性理論」にしろ、もう全盛期を過ぎてしまったのかもしれない。批評家達はこぞって「ゼロ年代」がどうとか、「テン年代」がどうとか、「大きな物語」がどうとか「小さな物語」がどうとか、色々口…

庵野秀明インタビュー

5月23日、「Sputnik」日本語版のサイトで、「『エヴァンゲリオン』の監督、日本アニメの寿命はあと5年か」と題された記事が出ました。 http://jp.sputniknews.com/japan/20150523/369080.html それによれば、日本のアニメは斜陽に向かっており、いずれ世界の…

#13/『ゴジラ』『ゴジラ VS デストロイア』~ゴジラはK DUB SHINEでは無い~

1995年12月9日に劇場公開され、今年公開から20周年を迎える『ゴジラ VS デストロイア』は僕にとって劇場ではじめて観たゴジラ映画であるとともに、ゴジラの死を描く内容、闇夜の中で高熱に身をよじるゴジラ、デストロイアの造形の禍々しさと美しさ、ラスト・…

#12/高校三年生の音楽論ーMr.Childrenの「根底にある暗さ」

突然だが私は暗い曲=マイナーコードの曲を非常に好んでいる。 賛否両論が起こりそうな作品であっても暗い曲であれば割と寛容な姿勢を見せる。知人のバンドだと話は別でパフォーマンスや全体の構成について考えるが、あまり関係ない一般人として聴く場合は暗…

#11/「かおりちゃん絶許」に学ぶー水橋かおりの愛され力

水橋かおり、という女性声優がいる。 今期では「魔法少女リリカルなのはViVid」の高町ヴィヴィオ、「グリサイア」シリーズの松嶋みちるに声を当てているが、代表作は何と言っても「ひだまりスケッチ」の宮子である。マミる人も代表作かもしれないが水橋かお…

#10/アルバムレビュー 『Tree』 SEKAI NO OWARI

SEKAI NO OWARIが2011年に元来の日本語表記から、バンド名を現行のアルファベット表記に改めた際、邪推ながらも連想したのは同年に発生した『東日本大震災』のことでした。“世界の終わり”は現実化してしまった。それでもなお“終わり”そのものを表現し続ける…

#7/『ゴーン・ガール』(2014・米国)~誰にも、何も見えない~

他人に対し『カッターナイフで滅茶苦茶に切り付けた手首』を見せ付けるような作品は露悪的です。一方で、受け手はかわいそうな子どもに向けるような同情の目線を持って、作品に接し、それ相応の感動を得ることが出来るでしょう。例えば、TVアニメ『新世紀エ…

#6/秋が冬に恋する話~『秒速5センチメートル』と『言の葉の庭』~

朗読×劇「ほしのこえ」上演@渋谷(2015年4月23日~27日) http://www.catmint-tai.com/ 劇場用アニメーション『ほしのこえ』上映@下北沢(2015年4月18~5月1日) http://homepage1.nifty.com/tollywood/ 今回は、上記のイベントに勝手に便乗して、『ほしのこ…

#5/『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』~境界の消えた世界で

『逆転』とは野球においても、アメリカン・フットボールにおいても選挙の得票率においてもゲームのルールが強固なものであることが前提です。また『逆転』とは、ゲームにおいて劣勢に陥っている主体の存在を必要としています。主体が劣勢に置かれる理由は、…

#2/『幕が上がる』~少女、或いは“物語”への徹底的な肯定

“観察映画”という独自のジャンルで知られる想田和弘監督の最も興味深いドキュメンタリー作品の一つに、劇作家・平田オリザを取り上げた『演劇』を挙げることが出来ます。僕は合計五時間以上に渡る、前篇と後篇から構成される『演劇』を学生時代に渋谷の映画…

#1/『ジョーカー・ゲーム』~敗戦国のスパイとして生きる

例えば『アベンジャーズ』に代表されるマーベル・ヒーローらの痛快なアクションが“ホット”なものとするなら、往々にしてスパイ・アクションとは“クール”なものと位置付けることが出来るのではないかと僕は思っていまして。その理由の一端は登場人物の衣装、…